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甲府地方裁判所 昭和61年(わ)149号 判決

本籍

山梨県都留市桂町一、四四七番地の八

住居

右同

遊技場(パチンコ店)経営

上杉武次

昭和一九年三月一四日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は、検察官今村隆出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年二月及び罰金四、〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、山梨県都留市田原二丁目一五番八号ほか二か所において、「カジノ一号店」等の名称で遊技場の経営をしていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外し、簿外預金を蓄積するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五六年分の実際総所得金額が三三、一〇六、一三二円あったにかかわらず、同五七年三月一一日、山梨県大月市駒橋一丁目一〇番二号所在の所轄大月税務署において、同税務署長に対し、同五六年分の総所得金額が一九、八〇二、一五六円で、これに対する所得税額が六、三九〇、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額一三、六一六、九〇〇円と右申告税額との差額七、二二六、四〇〇円を免れ、

第二  昭和五七年分の実際総所得金額が一三七、一五二、一六二円あったにかかわらず、同五八年三月一五日、前記大月税務署において、同税務署長に対し、同五七年分の総所得金額が三六、二〇四、八二一円で、これに対する所得税額が一五、七四七、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額八六、六五七、三〇〇円と右申告税額との差額七〇、九〇九、九〇〇円を免れ、

第三  昭和五八年分の実際総所得金額が一九三、九一二、七四〇円あったにかかわらず、同五九年三月一五日、前記大月税務署において、同税務署長に対し、同五八年分の総所得金額が四九、六三八、三七四円で、これに対する所得税額が二三、九七六、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額一二八、九八八、八〇〇円と右申告税額との差額一〇五、〇一二、六〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通

一  被告人作成の申述書

一  大蔵事務官作成の検査てん末書、売上調査書、仕入調査書、租税公課調査書、水道光熱費調査書、通信費調査書、広告宣伝費調査書、接待交際費調査書、損害保険料調査書、修繕費調査書、消耗品費調査書、減価償却費調査書、給料賃金調査書、利子割引料調査書、地代家賃調査書、燃料費調査書、固定資産除却損調査書、諸会費調査書、雑費調査書、青色申告控除額調査書、利子収入(利子所得)調査書、譲渡収入(譲渡所得)調査書、譲渡原価(譲渡所得)調査書及び経費明細調査書

一  渡辺幸一の検察官に対する供述調書三通

一  渡辺幸一作成の申述書(二通)

一  前田勝弘、佐藤將光、加藤政美及び勝俣茂雄の検察官に対する各供述調書

一  白須正夫の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  白須正夫作成の申述書

一  押収してある所得税の青色申告承認申請書(昭和六一年押第五八)

判示第一、第二の各事実につき

一  大蔵事務官作成の旅費交通費調査書、警備費調査書、給付補てん金(雑所得)調査書

判示第一、第三の各事実につき

一  大蔵事務官作成の有線料調査書

判事第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の従業員寮費調査書、保安手数料調査書

一  押収してある56年分の所得税の確定申告書(同押号の1)及び56年分所得税青色申告決算書(同押号の7)

判示第二、第三の各事実につき

一  大蔵事務官作成の貸付金利息(雑所得)調査書

判事第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の雑損調査書及び譲渡所得控除(譲渡所得)調査書

一  押収してある57年分の所得税の確定申告書(同押号の2)、57年分の所得税の修正申告書(同押号の3)及び57年分の所得税青色申告決算書(同押号の8)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の福利厚生費調査書、娯楽税調査書、支払利息(雑所得)調査書

一  押収してある58年分の所得税確定申告書(同押号の4)、58年分の所得税の修正申告書(同押号の5)及び58年分所得税青色申告決算書(同押号の9)

(法令の適用)

一  罰条 判示各所為につき所得税法二三八条

一  刑種の選択 いずれも懲役刑及び罰金刑選択(併科)

一  併合罪の処理 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(懲役刑につき犯情の最も重い判示第三の罪の刑に加重)

一  労役場留置 刑法一八条

一  執行猶予 刑法二五条一項(懲役刑につき)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 片岡博)

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